【女性活躍推進】企業が女性管理職を増やす理由と効果とは?ダイバーシティ経営・法制度・企業事例から読み解く

組織・文化

近年、多くの企業が「女性活躍推進」に本格的に取り組み始めています。新卒・中途採用における女性採用数の増加・比率の拡大はもとより、管理職や経営層への女性登用も着実に増えつつあります。本記事では、その背景にある法律や社会的要請、企業側の狙いや得られる効果、そして実際の取り組み事例に触れながら、「なぜ今、女性活躍が重要なのか?」を掘り下げていきます。


1. 背景にある社会的要請と法制度

■ 少子高齢化と労働力不足

急速に少子高齢化が進んでいる日本社会。総務省の統計によると、15~64歳の生産年齢人口は1995年をピークに減少しており、今後さらに労働力の確保が困難になると予測されています。これまでは労働力の中心だった男性の働き手が減少していく中で、労働力を確保・維持させていくために女性の労働参加を促すことは自然な流れとも言えます。つまり女性活躍が近年叫ばれるのは、この構造的な課題に対する喫緊の対処策であると言えます。

■ 「女性活躍推進法」の施行と改正

そのような社会環境において政府も法整備を進めています。2016年に施行された「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」では、企業に対し女性の活躍を数値化・可視化し、具体的な行動計画を策定することを求めています。

2022年4月にはこの法律が改正され、従業員301人以上の企業に義務づけられていた「一般事業主行動計画」の策定と情報公表が、従業員101人以上の企業にも拡大されました。これにより、中小企業も女性活躍の取組を避けては通れない状況となっているのです。

一方で女性活躍の推進を法的に明記したとしても、結局はその取り組みについては企業に任せられているじゃないか、という意見があるかもしれません。

ただし女性活躍に取り組まない企業は、株主などのステークホルダーから厳しい評価を受けることに繋がり、ある意味では投資家が着目する1つの重要な観点になっているとも言えます。


2. 企業が女性を登用する狙いとは?

■ 多様性(ダイバーシティ)の推進

グローバル競争が激化する中で、多様な視点を持った組織はイノベーションを生みやすく、変化に強いといわれています。これは性別に限った話ではありません。年齢・国籍などのバックグラウンドが異なる人材を組み込むことで、新しい商品やサービスの開発、あるいは顧客対応力の強化が期待されます。

女性活躍とは、こうした組織の多様性を担保し、意思決定の幅を広げる施策として注目されています。

■ ESG・人的資本経営への対応

近年は、投資家の間でも企業の「人的資本」や「多様性」への取り組みが注視されています。環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)を重視するESG投資では、女性の登用や育成体制の整備が「社会性」の指標のひとつとなっており、上場企業を中心にその取り組みが評価対象となっています。

人的資本経営については、以下記事で詳細にまとめています。あわせて参考にしていただければ幸いです。


3. 女性活躍の効果と企業にもたらすメリット

■ 採用力の向上と定着率アップ

ジェンダーに配慮した職場環境や、女性管理職のロールモデルが存在することは、女性応募者にとって魅力的な要素です。特にZ世代の若年層では、「働きやすさ」や「多様性」を企業選びの基準とする傾向が強くなっており、採用競争力の確保にもつながります。

また、出産・育児後の復職支援や柔軟な働き方の整備により、離職率の低下や社員のエンゲージメント向上といった効果も期待できます。

実際に私も新卒採用や中途採用の面談官を担っている中で、女性社員のCDPやロールモデル、あるいは入社後の配置先やキャリアイメージに対する質問も多くなっていることを感じます。

ライフイベントが自身の昇格や配置先に影響がないのか、そういったことをクリアに説明できる状態にしておくことも重要です。

■ 組織風土の活性化

意思決定の場に多様な意見が入ることで、会議の質が高まり、リスクの見落としも減ります。実際、女性管理職が増加したことで「コミュニケーションが活発になった」「部門間の連携がスムーズになった」といった声も多く聞かれます。


4. 具体的な企業事例

では女性活躍の考え方について理解した上で、実際の企業ではどのような取り組みを行っているのかも見てみましょう。

■ 資生堂 ― キャリア支援と制度整備の両輪

資生堂グループは、社員に占める女性の割合が80%以上であり、加えて女性管理職はグローバルで58.8%を占めています。また取締役会における女性比率も45.5%と、早くから女性のキャリア形成に注力している企業です。

加えて、女性の働きやすい環境を整備する観点から。事業所内保育所を開設しているほか、女性リーダー育成塾「NEXT LEADERSHIP SESSION for WOMEN」を開催するなど、キャリア形成支援にも注力しています。

さらに、男性の育児休業取得促進にも力を入れており、制度利用が女性だけに偏らない環境づくりが功を奏しています。

出所:https://corp.shiseido.com/jp/sustainability/labor/diversity

■ 三井住友信託銀行 ― 女性登用目標の明示と実行

同社では、女性管理職比率を2030年度までに30%以上にすることを目標に掲げています。

これは同社に閉じた取り組みではなく、経団連の目標と連動したものです。このように女性管理者比率30%の目標を掲げる企業は大企業を中心に多数ある中で、同社はその達成率をweb上で公開していることは評価されているのではないでしょうか・

また女性の管理者登用を推進するにあたっては、キャリアデザイン研修やリーダーシップ研修を活用することで女性のリーダー登用を支援するとともに、役員が次世代の女性幹部候補に対してメンタリングを行う「サポーター役員制度」を導入するなど、積極的な取り組みを展開しています。

出所:https://www.smtg.jp/about_us/management/human_resources/diversity_inclusion/womens_advancement


5. 今後の課題と展望

女性活躍の取り組みは進展しているものの、「女性管理職比率の全国平均」はいまだ15%程度にとどまっています(2024年時点)。形式的な登用や「数合わせ」にとどまらず、個々の能力と意欲を引き出す環境整備が引き続き求められます。

また、家庭と仕事の両立支援、男性の育児参画、ハラスメント対策など、性別に関係なく働きやすい職場づくりが本質的な「女性活躍」を支える土台です。


まとめ

企業が女性の採用・登用に力を入れる背景には、法制度の整備、労働力確保、投資家・社会からの要請など、さまざまな要因があります。そしてその取り組みは、企業にとっても「人材の多様化」や「生産性向上」といった大きなメリットをもたらします。

これからの企業経営において、女性活躍は単なるCSR(企業の社会的責任)ではなく、「経営戦略の中核」となっていくのです。

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