人材育成の新常識:なぜ今、企業内大学が注目されているのか?

人材育成・人材開発

近年、社員教育やリーダー育成を目的に、企業内に大学を模した教育機能を設置する会社が増えています。企業内大学はどのような役割を持ち、どのような成果を生み出しているのか、実際に導入している企業から学んでいきます。

企業内大学の設置事例

ソフトバンク:ソフトバンクユニバーシティ

ソフトバンクでは、「ソフトバンクユニバーシティ」を設置し、ソフトバンクグループの経営理念である「情報革命で人々を幸せに」の実現に向け、社員が自らのキャリア開発に向け活用できる社内研修制度を用意しています。

ソフトバンクユニバーシティには60~70の講座が用意され、社員が自身のキャリア目標に合わせ、主体的に研修を選択し受講する方式を採用しています。

学びたいレイヤーと目的に応じて、以下3つの体系を用意しています。

  1. ビジネスプログラム:ビジネス基礎スキルや会計スキル
  2. SBU Techプログラム:テクノロジースキル
  3. 階層別プログラム:役職や職務ごとに必要となるスキルや知識

加えて、本プログラムではソフトバンクのあらゆる分野で活躍している社員が認定講師として研修を行っており、実務を通じて醸成された経験やノウハウを社員に展開することで、実践で活躍できる人材を育成しています。

マクドナルド:ハンバーガー大学

マクドナルドは全世界で100以上の国に店舗を有しており、各国にトレーニングセンターを有しています。一方で、「ハンバーガー大学」は、世界9か国にしかなく、その1つは東京に設置されています。

ハンバーガー大学では、従業員にリーダーシップやマネジメントスキル習得の機会を提供し、ビジネスパーソンとしての成長を支援することを目的に発足しました。です。特に「楽しく学びながら必要なスキルを身に付ける」ことを理念に掲げています。

マクドナルドの店舗社員は、入社後各店舗での実習(OJT)を受け、その後ハンバーガー大学でコースを受講します。ハンバーガー大学では以下3つのコースを設定しています。

  1. シフトリーダーシップトランジション(SLT):基本的なリーダーシップを学ぶ
  2. イントロダクショントゥデパートメントマネジメント(IDM):役割と責任を担うリーダーシップを学ぶ
  3. レストランオペレーションリーダーシッププラクティスコース(RLP):リーダーシップ、チームビルディング、総合マネジメントを学ぶ

三菱UFJ:MUFG University

三菱UFJでは、価値創造を担う次世代の経営人材の育成を目的に、2018年度より MUFG University を開始しています。本プログラムは経営人材育成が目的であるため、対象はライン管理職以上となっています。

MUFG Universityでは、以下2つのコースを設けています。

  1. 次世代リーダーコース:部店長クラスを対象に外部の経営者や学識者による講座研修等を実施
  2. マネジメントコース:副部店長・次長クラスをタイ周夫に、経営人材に求められる人間力や大局観を醸成するリベラルアーツ研修等を実施

本プログラムを通じて、MUFGカルチャーの浸透や、経営陣と社員のコミュニケーション活性化を狙うとともに、変化が激化する市場においても幅広い分野で活躍できるグローバルリーダーの長期的な育成を実現しています。

こうした体系的な研修を通じて、次世代経営人材の早期発見や、主要ポストに対する計画的な配置を行うことができるようになり、経営人材候補者をプールすることも併せて実現しています。

設立以来、毎年度170~200名程度の人材を輩出しているようです。

トヨタ:トヨタインスティテュート

トヨタでは2002年よりトヨタインスティテュートを設立しています。

グローバルに事業展開するトヨタですが、1990年代以降グローバル展開を本格化しており、人材競争力の強化に注目します。そして、トヨタ及びその海外事業体を含めたグローバルトヨタの経営者、ミドルマネジメントを育成する人材育成機関として、「トヨタインスティテュート」を設立したのです。

トヨタインスティテュートでは、2つのコースを設定しています。

  1. グローバルリーダー育成スクール:グローバルトヨタの経営人材育成を行う
  2. ミドルマネジメント育成スクール:トヨタの哲学等を実践するための実務教育を行う

プログラムの内容については、教育研究者や教育機関(米国ペンシルバニア大学ウォートン校、一橋大学など)の協力を得て現在開発した背景があり、相当に会社として注力している様子が伺えます。

企業内大学の目的は大きく2つ

企業内大学は、社員のレイヤーや職務に応じて、適切なカリキュラムを体系的に用意している点で、有効な人材育成施策といえます。

ここまで見てきたように、企業内大学が目指すものは2つです。

キャリアオーナーシップの推進

経営人材の育成

多様なカリキュラムを用意し、社員自ら伸ばしたい能力に応じて研修を選択、受講するものは①に該当します。

キャリアオーナーシップの推進は、社員のエンゲージメントに直結するものであり、その先には事業の生産性向上や適所適材による事業の加速が期待できます。

エンゲージメントについては以下で詳細を解説しています。

今後の会社の経営層を計画的に育成し、後継者管理をしていくものが②になります。

目的は違えど、変化の激しい今日の市場において人材に積極的に投資をしていくのは適切な手段です。

今後、企業内大学が各企業に閉じず、他流試合的に様々な企業を巻き込む形で進んでいくものもあるでしょう。今後も人材育成手法については世の中の企業の動向を定点的に追っていくことが重要です。

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