内定者の50%がリファラル採用経由の企業も!人事なら理解しておきたい「リファラル採用」

人事運用(オペレーション)

近年、多くの企業が採用戦略の一環として「リファラル採用」に注力しています。リファラル採用とは、従来の求人広告や人材紹介サービス経由で人材を獲得するのではなく、社員が自社に入社を希望する友人や知人を採用選考に誘因・採用する手法のことで、採用の効率化や定着率の向上につながります。本記事では、リファラル採用の概要から、企業が注力する背景、期待する効果、メリットまでを詳しく解説します。

リファラル採用の意義

リファラル採用(Referral Recruitment)とは、社員や関係者の紹介によって人材を採用する方法を指します。具体的には、社員が自身の知人や友人、過去の同僚などで自社に興味を持つ人材を誘因しその人材を採用する流れのことをさします。

従来企業の採用活動は、自社HPや求人媒体、転職サイト、人材紹介会社、合同説明会等で自社をPRし、応募者を募るやり方が主流でした。一方で、終身雇用を前提として入社をする人材が減少し、いまや転職市場はこれまでになく活性化しています。加えて社員や退職者が、所属していた企業の働きやすさや処遇等を評価するサイトやSNSが発達したことで、働く場所を自ら選択できる時代になっています。そのため企業目線では、自社で求める人材像に合致する人材をいかに少ない投資で獲得できるかが重要となってきます。

リファラル採用は、単なる知人の紹介ではなく、企業文化や求める人材像にマッチした候補者を社員のネットワークから獲得する効果的な手法であるからこそ注目されています。

企業がリファラル採用に力を入れる背景

さて企業がリファラル採用に注力するのは、単に社員のネットワークを活用できるという利点だけではありません。背景には様々な社会的・経済的な要因もあります。

採用難・人材不足の深刻化

少子高齢化や転職市場の活発化により、特定のスキルや経験を持つ人材の獲得は年々難しくなっています。特にエンジニアやデータサイエンティストなど特定のテクニカルスキルを求められる職種は、完全な売り手市場であり、求人広告だけでは十分な候補者が集まらないケースが多いです。
リファラル採用は、社員のネットワークを通じて、よりターゲットに近い候補者を効率的に集められる手段でもあるのです。

採用コストの最適化

従来の人材紹介サービスや求人広告には高額なコストがかかります。転職市場で自社にマッチする人材をエージェント経由で誘因してもらう場合や、誰もが知る転職サイトに求人広告を掲載する場合、それだけでも数百万~数千万円が発生します。一方で応募者を確保できたとしても、その中にどれだけ自社にマッチする人材がいるかは未知であるというリスクもあります。そのためリファラル採用は、1名を採用するためのコストが低いケースが多く、採用効率の向上につながります。

社員のエンゲージメント向上

社員が知人や友人を紹介する過程で、企業や自分のチームへの愛着や責任感が高まります。結果的に、社員エンゲージメントの向上や組織文化の浸透にも寄与します。また企業によっては、紹介した人材が入社をした場合に、紹介した社員に一定のインセンティブを与えているケースもあります。ただし金銭での報酬は法的にグレーの解釈もあることから、多くの企業では会食費用を会社負担にするケースや、評価に加点する等の対応をしているようです。

定着率向上への期待

従来の求人広告や人材紹介経由で採用された人材よりも、社員紹介によって採用された人材は企業文化や職場の雰囲気に馴染みやすく、定着率が高いという傾向があります。これは、紹介者から企業の情報や働き方に関するリアルな情報が事前に伝わるため入社後のギャップが少なくなるためです。加えて、入社した際に紹介された友人が身近にいることで、わからないことや疑問を持った際にすぐに聞ける環境にあるという心理的安全性が担保されていることも大きな要因です。


リファラル採用を開始する際のプロセス設計

リファラル採用を整備する際には、以下のプロセスごとに運用の建付けを実施しましょう。

  1. 紹介制度の整備
    企業は社員向けに紹介制度を整備し、推薦可能な候補者や手続き方法を明確にします。どのポストで何名募集しているかを社員に対してもオープンにし、社員がいつでも知人を紹介できるよう社内のウェブサイトを整備することが重要です。
  2. 選考プロセスの設計
    従来の採用媒体経由等での選考プロセスと、リファラルの選考プロセスに差分を設けるのも効果的です。例えばリファラル経由での選考時には、既に社員が自社での活躍像をイメージした上で誘因しているため、書類選考を不要にしたり面談の回数を少なくしたりすることも効果的です。それが紹介する社員のモチベーションとなり紹介された人材目線でも魅力となります。
  3. 選考後の振り返り
    紹介者と採用者の両方に対するフォローや評価を行います。場合によっては求める人物像と乖離がある方が誘因されてしまうケースもあるでしょう。その場合、自社の求める人材像が社員に伝わっていな可能性もあります。単に紹介数を重視するのではなく、その質にも目を向け効果を測定することが重要です。

リファラル採用を導入している企業から学ぶ

株式会社セールスフォース・ドットコム

CRMソフトウェアの開発・提供をしているグローバル企業で、多様なバックグラウンドを持つ人材を積極的に採用しています。その中でも、リファラル採用を企業文化の一部として推進している点が特徴です。

  • インセンティブ制度:紹介者に旅行券などの報酬を提供するキャンペーンを展開。
  • 企業文化の共有:コアバリューに共感する人材の採用を重視。
  • 段階的な呼びかけ:入社1か月後や1年後など定期的に社員にリファラル協力を依頼。

内定者の約50%がリファラル採用経由であり圧倒的な採用効率を誇っていると言えるでしょう。

出所:約半数をリファラルで採用するSalesforceの成果を支える「コアバリュー採用」とは|共感採用はなぜ必要か vol.02【Event Report】 – Wantedly

リファラル採用の報酬(インセンティブ)相場|決め方や違法となるケースを解説 – Wantedly

株式会社SmartHR

クラウド人事労務ソフトウェアの開発・提供をしている急成長中の企業です。創業初期からリファラル採用を積極的に導入しており社員同士のつながりを活かした採用を促進しています。

  • 会食費の負担:紹介者と候補者の会食費を会社が負担。
  • 心理的負担の軽減:「ごめんねごはん制度」を導入し、不採用時も紹介者が気まずくならないようフォローする仕組みを用意しています。

不採用時のフォローまで実施している企業は多くありません。リファラル採用による内定者が全体の約30%を占めていることからも、紹介する社員の継続的なモチベーション維持ができていると言えるでしょう。

出所:常に進化し続けたい!SmartHR式リファラル活用 | Refcome(リフカム)- リファラル採用を見えるかし、共にカイゼンする伴走型サービス

まとめ

リファラル採用は、単に社員経由で人材を獲得する費用対効果の高い手法ではなく、マッチング率を高め退職リスクを最小化できる有効な手段です。加えてリファラル採用が機能すると、中途市場からの人材獲得に係る費用の大幅な削減も期待できます。リファラル採用は今日において、無視できない重要な採用チャネルとなっているのです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました