小集団活動の効果とは?:ー現場力と組織力を高める施策ー

組織・文化

小集団活動とは?

小集団活動とは、社員が自発的に5〜10人程度の少人数グループを組み、自ら業務改善や課題解決に取り組む活動を指します。

日本では1970年代から製造業を中心に広く普及し、特に「QCサークル(Quality Control Circle)」として広まっていきました。現在では、製造業に限定せず広くあらゆる企業において、小集団活動が活発に行われています。

小集団活動は、現場で働く社員が主体となり、自分たちでテーマを選定し、話し合いを繰り返しながら解決策を考えて実行していく点が特徴です。トップダウンではなくボトムアップで物事を進める仕組みであるため、現場目線のリアルな課題に対し、実効性のある改善が期待できます。

なぜ社員は小集団活動に取り組むのか、社員目線のメリットについて

小集団活動は、社員一人ひとりにとっても多くの利点があります。

まず、自分の意見やアイデアを反映できる場があるという点です。通常の業務では、組織や担当ごとにミッションや役割が定められ、もっと言えば個人ごとの目標があるはずです。

そのため、日々やらなければならないことに追われ、業務も固定化され、場合によっては組織や上長からの依頼や指示に基づいて取組を行うことが多く、個々の意見や創意工夫が反映されづらい側面があります。

しかし、小集団活動はそもそも「自発的に」「やりたいテーマを定め」「自分たちで考えて進める」ことが基本であるため、小集団活動に取り組む社員は主体性や責任感が育ちます。

またチームでの協働を通じて、コミュニケーション力や協調性が高まることも大きな利点です。普段あまり話す機会のない他部署のメンバーと協力することで、視野が広がり、職場内の人間関係もより良好になります。

さらに、活動の成果が目に見える形で現れることが多く、自己効力感の向上にもつながります。たとえば、作業時間の短縮やミスの削減など、具体的な数字として改善の結果が確認できる場合、達成感を得やすく、自信につながります。

会社目線でのメリット

企業側にとってのメリットも多くあります。最大の効果は、現場発の継続的な改善によって、コスト削減や品質向上などの成果が期待できることです。現場の課題は現場が一番よく理解しているものです。そのため小集団活動はボトムアップ型の課題解決として理にかなった手法なのです。

また、従業員の育成にも寄与します。問題発見力、課題解決力、チーム運営能力など、さまざまなスキルが養われるため、将来的に管理職やリーダー層を育てるための土台としても機能します。

さらに、組織文化の醸成にも役立ちます。継続的な改善活動が組織に根付き、「改善は誰かがやるもの」ではなく「自分たちがやるもの」という意識が共有されるようになると、組織全体が柔軟で前向きな体質へと変化します。


小集団活動の導入事例

以下に、実際に小集団活動を導入して効果を上げている企業の事例を紹介します。

トヨタ自動車

トヨタは「カイゼン(改善)」の文化で世界的に知られていますが、その中核を担っているのがQCサークル活動です。工場や事業所ごとに多数のサークルが存在し、それぞれが作業手順や安全性、設備稼働率などのテーマに取り組んでいます。

トヨタではこの活動が単なる改善手法ではなく、社員一人ひとりが仕事に誇りを持ち、自律的に考えることを促すための教育の一環とも位置づけられています。年間の優秀活動は全社的に表彰され、他部門とのナレッジ共有も盛んです。

日立ハイテク

日立ハイテクでは、職場の第一線で働く従業員による「改善活動」を推進しています。​チームで目標を達成することが個々のスキル向上や企業価値の向上、顧客満足度の向上につながると考え、現場主体の運営方針を掲げています。​

また、従業員が自職場内の作業・事務改善、安全衛生上の改善、不良防止に関する提案を行う「改善提案制度」を導入し、職場審査の上で報奨金を授与しています。​さらに、小集団活動の推進上の悩みや改善方法についてグループ同士で話し合う「クロスコミュニケーション支援」も行っています。

これらの取り組みにより、日立ハイテクはQCサークルの大会で優秀賞を受賞するなど、外部からも高い評価を受けています。​

出所:https://www.hitachi-hightech.com/jp/ja/career/hms/graduates/sgm.html

岡山村田製作所

岡山村田製作所では、2005年よりQCサークル活動を開始し、活動のレベルアップを図ってきました。​近年では、QCサークル岡山大会で8年連続金賞を受賞し、全日本選抜QCサークル大会へも8回出場するなど、社外からも高い評価を受けています。​

また、2015年度からはQCサークル岡山地区に参加し、岡山県下のQCサークル活動の活性化に協力しています。​その一環として、近隣地域の企業へQCサークル活動の導入支援も行っており、地域の発展に貢献しています。​

これらの取り組みにより、岡山村田製作所は2022年度のQCサークル活動(小集団活動)優良企業・事業所表彰を受賞しました。​

出所:https://corporate.murata.com/ja-jp/group/okayamamurata/blog/2023/0203

小集団活動を自社でも開始していくために

小集団活動については様々なメリットがあることを記載してきました。

では企業においては、ただ口を開けて小集団活動が始まることを待つのがいいのでしょうか?取組が始まり普及していくための仕掛けについて考えてみます。

小集団活動の開始と表彰を宣言する

小集団活動は社員が自発的に取り組むものですが、現在そういった文化がない会社において、ある日突然小集団活動が開始されるということもまた珍しいでしょう。

そのため小集団活動の開始を会社として宣言することは重要です。

加えて、会社として表彰もあわせて用意することで社員のインセンティブをしっかり用意しましょう。ただ誤解してはいけないのは、取組に期待するメッセージ自体はトップラインで出すものの、取組を強制してはいけないということはしっかり認識しておきましょう。

チームや取組を全社員に公開する社内イントラを用意する

小集団活動に取り組む社員については、そのチームに対しチーム名をつけてもらい、そのチーム名と取組内容をあわせて社内のイントラに掲載することも効果的です。

そこでチームメンバーを募集したり、取組に対し社員が確認しコメントを返したりできるようにすることで、会社の中で小集団活動に対しスポットライトを当てることが大切です。

まとめ:小集団活動は現場と組織をつなぐ力

小集団活動は、個人の成長と組織の成長を同時に実現できる、非常に有効なマネジメント手法です。導入にあたっては、活動の自由度や支援体制、成果の可視化・表彰制度などを整えることで、継続的かつ効果的な活動が期待できます。

働き方の多様化や組織の変革が求められる今だからこそ、社員の声を活かし、改善を自律的に進めていく「小集団活動」に改めて注目する価値があります。

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