「キャリアコンサルタント」の導入は必要か?設置のススメ

人材育成・人材開発

社員の自律的なキャリア形成が求められる今日において、「キャリアコンサルタント」の役割が注目されています。企業においては、従業員のキャリア支援を戦略的に進めるための仕組みづくりが求められており、その中核を担うのがキャリアコンサルタントです。

この記事では、キャリアコンサルタントが近年なぜ必要とされているのか、導入が必要な企業の特徴や、導入によって期待される効果、さらには実際の導入事例などを交えて詳しく解説します。

キャリアコンサルタントとは?

キャリアコンサルタントというと、多くの方は「社員の悩みを聞いて、解決に向けた助言を担う役割を持った人」をイメージするのではないでしょうか?

そのイメージはもちろん正しいのですが、実は厚生労働省が認定する国家資格であり、職業選択や能力開発、キャリア形成に関する相談・指導を行うプロフェッショナルのことを指します。

企業内でキャリアコンサルタントが果たす役割は、単なる相談員にとどまらず、従業員のキャリア意識の醸成や、キャリア面談の設計・運用、さらには組織開発の一翼を担うケースも増えています。

キャリアコンサルタントの必要性が高まっている背景

近年、大手企業を中心に、キャリアコンサルタントの導入を推進する企業が増えてきています。その背景には、以下のような社会的・経済的な変化があります。

1. キャリアの多様化・複雑化

変化する市場において競争力をもつために、多くの企業は人材投資を積極的に実施しています。そのため、社員は高い専門性の獲得に向け自らを成長させ、加えて会社としても実力主義での登用を推進する制度へと変革しています。

そうした環境下において、社員は自らのキャリアを会社に任せるのではなく我が事化し、自らキャリアを考えその実現に向けて能力開発等の挑戦をするようになっています。こうした社員一人ひとりが描くキャリア像の実現に向け、副業、資格取得、社内の別ポジションとのダブルワーク等様々な選択肢が広く社員に開かてきたことがあげられます。

2. 人的資本経営への注目

企業が持続的に成長していくためには事業を支える人材に対する投資こそ重要である、という考え方が広まり、人的資本投資が経営課題になりつつあります。キャリア支援は、その中心的施策の一つと位置づけられます。人的資本経営については別で詳細にまとめていますので、あわせてご覧ください。

3. エンゲージメント向上と離職防止

従業員のキャリアへの関心に応え、個別最適な支援を提供することで、離職リスクの低下やモチベーション向上にもつながることが明らかになっています。誰しも上司や職場の同僚には相談しにくい悩みを持つことがあるでしょう。利害関係のない第三者的立ち位置で助言を行う機能が必要とされてきています。

導入が必要な企業の特徴

以下のような企業は、キャリアコンサルタントの導入が効果的であると考えられます。

  • 離職率が高く、定着施策に悩んでいる企業
  • 社員の年齢層やキャリア志向に多様性がある企業
  • リスキリングや社内公募制度などを導入し始めた企業
  • ジョブ型人事制度への移行を検討している企業
  • 人的資本の情報開示(ISO30414など)に対応したい企業

このような企業では、社員の個別のニーズに応えながら、キャリアの方向性と組織の戦略をすり合わせる支援体制が重要になります。

キャリアコンサルタント導入による期待効果

企業がキャリアコンサルタントを配置・活用することで、以下のような成果が期待されます。

■ 離職率の改善

キャリアの不透明さや不満が離職につながるケースは少なくありません。面談によって社員の不安を早期にキャッチし、支援を行うことで、離職率を抑えることができます。

■ キャリア自律の促進

「何をすればいいか分からない」「自分の強みが分からない」といった社員に対し、自己理解と目標設定のサポートを行うことで、自律的な成長を促します。

■ マネジメント層の負担軽減

1on1やキャリア支援の重要性は高まる一方で、現場の上司が対応しきれないという課題があります。キャリアコンサルタントが並走することで、マネジャーの負担を軽減しつつ、質の高い支援が可能になります。

■ 人材配置の最適化

社員の適性や希望を把握することで、適材適所の配置を実現しやすくなります。ミスマッチの防止やパフォーマンスの最大化にもつながります。

実際の導入事例

● IT企業A社(従業員数300名)

中堅層の離職率が高かったことから、社内にキャリアコンサルタント資格保有者を設置。中堅社員とのキャリア面談を定期的に実施し、本人の志向と組織ニーズの擦り合わせを図った結果、翌年には離職率が30%減少。管理職候補の早期発掘にもつながった。

● 製造業B社(従業員数1000名超)

リスキリング支援の一環として社内キャリア支援制度を構築。キャリアコンサルタントが中心となって、キャリア相談窓口を開設。自発的に相談を希望する社員が増え、スキルアップ研修への参加率も向上。

最後に

キャリアコンサルタントは、社員一人ひとりの可能性を引き出し、社員エンゲージメント向上に重要な役割を持つほか、その結果として組織の生産性向上に貢献してくれる存在です。今後ますます多様化・複雑化するキャリアに対応していくためにも、社内でのキャリア支援体制の構築は企業成長の鍵となります。

人事部門としては、「誰が担うのか」「どの範囲で支援するのか」「どう活用するのか」といった戦略的な視点で、キャリアコンサルタントの導入を検討することが重要です。社員と組織の未来を見据えた、新しい人事戦略の一歩として、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。

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